リアルタイムドキュメンタリー

逆転への狼煙

大学院を修了後、大手SIerでSE(システムエンジニア)として勤務する34歳。新卒で入社して以来10年間、流通系のシステム開発・運用に携わり、これまで目の前の仕事を一生懸命こなし、突っ走ってきた。

組織で起きる全てを自分事としてとらえ、そのうち全部自分が解決してやろうと意気込んでやってきた。無論、人が嫌がる仕事でも積極的に手を上げた。

結果、社内ではそれなりの評価や信頼も頂き、組織の代表として社外や海外での研修にも派遣された事もあった。給料も右肩上がりで、世間一般的に言っても上等過ぎる金額を貰っていた。

そんな僕が社会人生活10年目にして、自分の未来や希望が全く見出せなくなり、目の前が真っ暗になった。お酒を飲んだところで、明日は何も変わっていない、何の解決にもならない。そんな事は知っていながらも、酒量と下っ腹の脂肪、ため息だけは日増しに増えていった。

確実に目の前にやらないといけない事があるのに、頭と体が浮遊状態で、何も手をつけられなくなって、その場しのぎの仕事を繰り返す事で、日々をなんとかやり過ごしていた。若手時代に絶対になりたくないと思っていた先輩に、いつしか自分がなり下がっていた事に気づいた。いわゆる老害というやつだ。

そんな事を考え続けていると、休む日も増え、最終的には会社に行けなくなった。

関係者にかけている迷惑を想像すると、胃だけでなく五臓六腑全てが握り潰されたように痛かった。ベッドからも出られない。出られたとしても、自宅を出た途端急に足がすくんでしまう。熱が出る事もあった。とにかく全身のセンサーが出社拒否反応を示しているような状態だった。

その当時、プライベートの変化も重なった、結婚5年目にしてようやく出来た待望の子種がちょうど妻のお腹に宿り出したタイミングだった。苦労を重ねて出来た子宝という事もあり、万一の事を考え余計な心配をかけまいと、当初妻には黙って会社を休んだ。

何日も漫画喫茶にこもり、朝から晩までYoutubeやNetflixを見ていた。ただ時間を潰すという一点の目的だけの為に。

リストラされたサラリーマンが何事もなく朝に出社し公園で時間を潰す。昔ドラマで見たそれと同じ、ノンフィクションの主人公が自分に置き換わった気分だった。あまりにも屈辱的で情けなくて、まさに人生のどん底だった。

子供の心拍が見えた時に、僕はようやく妻にカミングアウトした。医者からは抑うつ状態と診断され、2ヶ月間の療養を勧められていることを。

 

今は2ヶ月と少しの療養を経て、復帰に向け準備中のステータスだ。

復活の狼煙をあげる為の気力は十分蓄えた。

この人生の大ピンチをチャンスに変えるべく、立ち上がろうと思う。

「最愛の人を無くし、挙げ句の果てに会社も倒産、借金うん億円から再起した大社長」や「幾度の怪我や病気を乗り越え、不屈の精神でスーパースターに返り咲いたスポーツ選手」といった派手さはないが、

サラリーマン生活も10年目に突入し、守るべきものも背追い込んだ30代という世に溢れたリアル過ぎるシチュエーションのおっさんが、しがらみや逆境をはねのけ、プレイフルな人生を送る為に模索する様をリアルタイムなドキュメンタリーとして発信することで自分自身を成長させたい。

そしてその過程を通して、同じような悩みを抱える同世代の方々を少しでもエンパワーメント出来れば幸いです。

 

今日から一つずつ、僕は逆転への布石を打っていく。