本書は男性が女性に女性が男性になってしまう「異性化」がありうる世界観を描いたTSFジャンルの漫画だ。
ただし、よくあるTSF漫画と捉えると物語の本質を見誤る可能性がある。
ジェンダーに関する多様な考えや価値観の存在に気づき、想像力を獲得すること。
それこそが本書のメッセージだ。
女性視点で見た社会や性差別のありよう。(作者は女性)
セックスレス、人工授精、未婚・離婚を絡めた家族のあり方や夫婦としての意義の見直し。
性転換者への偏見、彼女ら(彼ら)を受け入れる会社、支える人の姿や葛藤。
女装、レズ、不倫などの人間が持つ多面性や複雑な恋愛感情。
それらが現実世界でもよくあるような人間関係を伴い、たった六巻の中にこれでもかと詰め込まれている。
異性化というインパクトのあるフィクションを物語に持ち込む事で、普段なら面食らってスルーするようなノンフィクションなテーマに対しても、不思議と大きな想像力を働かせて一気読みしてしまった。
まんまと作者の術中にハマってしまったのだろう。
ところで八月からドラマ化も決まっているようだ。
こっちも非常に楽しみにしています。