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自己啓発とニューエイジの関係性あるいは2020年代の強くてニューエイジ

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「原因と結果 36の法則」 ジェームズ・アレン著

私は著者のことを本書で初めて知った。著者のことを少し調べてみると自己啓発の元祖のような存在だという。

本書でも「まさに古典的な自己啓発本!」という36のワードが並んでいた。誤解を恐れず言ってしまえば決して真新しいことはなく、ある意味で常識的な内容だと思う。

社会人になってからは、自己啓発書の類はあまり好きになれず遠ざけていたが、本書をきっかけに自己啓発の歴史を知ると面白い事実も見えてきた。

自己啓発というものはそもそも19世紀末に興った霊性復興(ニューエイジ)運動と結びついているという事実だ。

ニューエイジを『立花隆先生、かなりヘンですよ―「教養のない東大生」からの挑戦状』から引用する。

 ニューエイジというのは、1960年代後半から70年代にかけて流行した世界的なムーブメントだ。ベトナム反戦運動の盛り上がりや公害の発生などが、これまでの科学万能・発展至上主義的な考え方では必ずしも世界は良くならないという批判をもたらしていた。ヒッピーやドラッグ文化が流行したのもこの時代である。

 この行き詰まり感を打破するために、今までのような「進歩と発展」ではなく、「平和と調和」を目指す価値観こそが人類の未来につながるのだ、とする考え方が生まれてきた。これがニューエイジ思想である。きわめて神秘主義的な傾向が強い。

ニューエイジ運動は、かつての世代が盲信してきた近代的合理主義や伝統的キリスト教への反発から、東洋思想や神秘主義、ヨガ、呼吸法、占星術、などを積極的に採り入れ、内面世界を追求してゆく大衆運動が始まった。やがて宗教文化的な側面ばかりでなく、ニューサイエンス、エコロジー、潜在能力開発、自然医学、ヒーリングなど領域が拡大されていった。

2020年代に突入した現在の世に目を向けてみると、世界の各地で大麻合法化の流れが加速し、シリコンバレーではマインドフルネスや禅の思想が流行り、公園ではヘルシー思考な女性がヨガに興じている。

人に支持されるサービスを提供するには、テクノロジードリブンでなく体験価値こそが最も重要だと喧伝されている。

つまり、2020年になったいま、繰り返される歴史のなかで再び新たなニューエイジ思想がやってきていると言えるのではないだろうか。

誰もが情報発信して繋がれる、強力なテクノロジーを手に入れた「強くてニューエイジ」の時代が。

当時と現在のニューエイジの類似点を比較検討すると、山ほど面白い事実が見えてきそうだが、本書の内容とは逸脱してしまう為、別の機会に譲りたい。

まさか、古典的な自己啓発本からこの着想が得られるとは思いもしなかった。もしかするとこれは運命的な出会いなのかもしれない。これが読了後の正直な感想だ。

原因と結果 36の法則

原因と結果 36の法則