世の中はキャッシュレス大戦国時代、18年12月にPayPayが先行して実施した「100億円還元キャンペーン」に続き、LinePayやメルペイ、楽天Payなど各社が次々に大型キャンペーンを実施した結果、大幅赤字に陥る企業も出てきています。
「なぜそうまでして各社はキャッシュレス市場の覇権を握りたがるのか」
考察を深めていきたいと思います。
前半の振り返り
前半ではクレジットカード会社のビジネスモデルを持ち出して、覇権を握った先のキャッシュレス会社の取り分(ほぼ確定分)がいかに大きいかを説明しました。
前半を読んでいない方はこちらを要チェック
後半パートでは、ほぼ確定分の利益に加えて、さらなるビジネスの可能性について考察していきます。
キャッスレスアプリは新たなポータルとなる
今のユーザー行動を見るとWeb検索の大部分はPCからのアクセスです。モバイルの場合はスマートニュースやTwitter、Instagramなど、自分がよく開くアプリから流れてくる情報を拾い読みするのが一般的です。
つまり、よく使うアプリはアイキャッチを集めるポータルになります。
例えばLINEPayのトップであれば、チラシ、家計簿、クーポン、保険、投資、ショッピングへと導線を引いています。
PayPayのトップには「タクシー配車」があるのが面白いですね。
ちょうど今日の日経にも出てましたが、アリペイ、wechat、グラブなど海外で広がっている決済サービスを軸にしたスーパーアプリ化の流れです。
ビジネスはプレイスの奪い合いなので、アイキャッチの場が創出できた先には大きなビジネスの可能性があります。
データの利活用による新規サービスの創出
キャッシュレス化の先のデータの利活用こそが真の狙いだ!と声高に叫ばれています。
「データは21世紀の石油」とも呼ばれ、価値あるものとして最重要視されるようになりました。
個人を識別した状態でWebやアプリの参照・行動履歴、生体情報、移動情報、あるいはSNS上の繋がりや発言履歴から推測される政治思想、そしてリアル・ネット関わらず購買情報が正確に補足できるようになりました。
これらのデータを利用することで精度の高い商品・サービス開発ができたり、パーソナライズされた情報をTPOに合わせて提供する事が可能になります。
これがデータが石油と呼ばれる理由です。
キャッシュレス化する事で、決済や消費に関するデータを他データと組み合わせて利活用する事で新たなサービス創出も期待されています。
例えば、個人向けの小口融資、FPや税理士ら専門家からのフィナンシャル
・アドバイス等のFintech系サービスです。
また、決済データを売れる形にしてマーケ用情報として販売するビジネスも考えられます。この「売れる形にして」という点が腕の見せ所で、例えば位置情報と決済データを紐付けて、より精緻な商圏情報を描くことで、新規出店時の売上推計へと活用するといった具合です。このあたりはデータ加工のアイデア次第で様々なビジネスが生まれると想定しています。
それでも購買データを持ってる小売会社が強者
僕はあらゆるデータが取得可能となった現在においても依然として価値が高いのは購買データだと考えています。
購買行動こそが人間の欲求そのものに基づくものだからです。
あなたは「ネット検索や発言履歴」と「購買履歴」のどちらを見られたくないですか?
僕は圧倒的に購買履歴の方が晒されたくありません。
キャッシュレス各社は、支払った日時、会社、金額の情報は取得可能ですが、
具体的に何の商品を買ったかのデータまでは分かりません。
例えばスーパーでの決済金額が分かっても、具体的に何の商品をいくら分買っているか分からなければ、たいして役立つ情報になりません。
キャッシュレス化の先のデータの利活用こそが真の狙いだ!とは言われるもののPayPayやLinePay等のキャッシュレス会社単体で保持している決済データではさほど有益なものにならないと思っています。小売会社の具体的な購買情報と合わせることで価値が出てくるので、データ活用ビジネスへと乗り出す頃には小売会社とどのようにパートナーシップを組んでいくかがポイントになりそうです。