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今さら聞けないキャッシュレス会社が大幅赤字でも覇権争いし続けるワケ【前半】

キャッシュレス各社は大幅な赤字

キャッシュレス大戦国時代に突入した昨今において、一消費者としての立ち振る舞いを考えるならば、各社が展開する期間限定の大型キャンペーン全てに乗っかり、片っ端からポイント還元の恩恵を受けまくるのみです。

僕の場合でも、これまでのポイント還元を累計すると数万円はお得に買い物出来ているんじゃないでしょうか。

キャッシュレスサービスの中でもQRコード決済サービスを展開する企業側に目を向けて見ると、18年12月にPayPayが先行して実施した「100億円還元キャンペーン」に続き、LinePayやメルペイ、楽天Payなど各社が次々に大型キャンペーンを実施した結果、大幅赤字に陥る企業も出てきています。

なぜそうまでして各社はキャッシュレス市場の覇権を握りたがるのか。

今日はそんな話をしたいと思います。

いかに今更感を醸し出さずに新たな発見をお届けできるかへの挑戦です。

 

QRコード決済サービス大手の大幅な赤字決算

まずQRコード決済サービス最大手のPayPayです。

つい先日の2/5に発表された19年度の第3四半期決算によると、

PayPay2019年度3Q決算

参照:Z HOLDINGS IR資料

決済回数、登録者数共に2Qから3Qにかけて急拡大しています。ユーザーからの評価も上々、QR決済の日常利用が浸透してきている証です。

そんな王者PayPayも18年度には売上収益が約6億円で、キャンペーン費用が含まれる販管費は371億円、当期利益は367億円のマイナスを出してまでQRコード決済市場の制覇に力を注いできました

LinePayは、18年12月期の数字では売上収益44億円に対し、当期利益が▲54億円。

直近の19年12月期の数字ではLINEPay単体の決算公告が見つかりませんでしたが、LINE有報の戦略事業(LinePay含むFintech,AI事業などが含まれる)全体でも▲140億円程度と18年度とほぼ同等。

参照:LINE IR資料

メルペイもメルペイ事業単体の赤字額は非開示となっているが、19年6月期の決算を見ると▲121億。日本のメルカリ事業の調整後営業利益が94億円と順調に伸ばしているので、メルペイとUS事業で合わせて単純計算200億円以上を投資している計算になります。

参照:mercari IR資料

勝者総取りのキャッシュレス市場

なぜこうまでしてキャッスレス市場の覇権を握りたいのでしょうか

このマーケットは勝者総取りの世界です。Winner-take-allってやつです。

顧客が増えれば増えるほど顧客にとっての便益が増加するネットワーク効果が働きます。QRコード決済サービスの場合は、使える場所や送金しあえる友達、交換可能なポイントの種類などが増える事によってより使い勝手の良いサービスとなっていきます。これが強力な参入障壁を生み出します。

一度築き上げた参入障壁は多少のことではビクともしません。一度覇権を握ってしまえばあとは勝手にネットワーク効果が働き、長期間にわたって金のなる木としてチャリンチャリン。だから各社覇権を握ろうと必死になっています。

クレジット会社のビジネスモデルから考えるキャッシュレス会社の取り分

PayPayは2021年6月、LinePayは2021年7月まで店舗側の決済手数料を無料に据え置くと宣言していますが、一旦戦いが収束した後はクレジットカード会社同様、何らかの形で店舗側の加盟店手数料を設定してくるはずです

この加盟店手数料は大きな収益源となります。そして、収益源はこれだけではありません。

既存のクレジットカード事業を展開する会社の決算を見るとわかりますが、カードショッピングのテイクレートは大体2%、高くても3%弱です。楽天カードや三菱UFJニコス等の競合他社も概ね同じ割合です。

以下は19年3月期のクレディセゾンの取扱高・営業収益ですが、こちらの決算書では、加盟店収益、リボ残高収益、年会費の内訳で営業収益がわかります。

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参照:クレディセゾン2019年3月期決算資料

上の表を見ると、カードキャッシング事業とリボ残高で半分近くの収益を上げている事がわかります。加盟店手数料の次は、よりテイクレートの高いリボ残高収益へと展開してくるはずです。

年会費については、流石に各社無料で使わせているものに対してサービス単体でいきなり有料化した場合、顧客が流出してしまうリスクがある為、グループ内の他サービスと抱き合わせで、さりげなく年会費を取っていくモデルにシフトしていくんだろうと思います。ちょうどアマゾンがやったように。 

クレディセゾンはこれでざっと1600億円の収益を叩き出しています。

クレディセゾンの会員数が2600万前後、PayPayが2400万なのでほぼ同等。

取扱高はPayPayが非公開ですが決済回数からなんとか推計してみると、4Qもこのままの伸び率でいけば通期で約10億回の決済回数に手が届きそう。QRコード決済の支払い単価は1000円以下が多いのでコンビニの平均単価600円あたりで低めに計算してみても既にPayPayは年間6千億円程度の取扱高に成長している事がわかります。

クレディセゾンの年間取扱高が4.6兆円なのでクレジットカード会社と同じように加盟店に年会費を取り出しただけで、PayPayでも既に100億円くらいは営業収益が上がる計算になります。

そりゃあ、みんな狙いたいはずですよ。

でもそれだけではありません。これはほぼ確定している取り分でさらにその先があります。

長くなってしまったので、明日の後半に続きます。